ジョブコーチトピックス

ADHD  ( 志賀 利一 : 2005/01/28 )

ADHD(注意欠陥・多動性症候群)とは、小児の行動上の特徴から「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの症状が、年齢と比較して顕著に目立ち、そのため幼稚園・保育園・学校等における社会生活に明らかな問題がある場合に児童精神科医等により診断される診断名です。一般的には、知的障害や広汎性発達障害(自閉症等)、被虐待児の場合は、3つの症状が顕著であってもADHDと診断しない場合が多いようです。しかし、幼稚園や保育園で集団生活をして、初めてこのような症状による問題が表面化したとき、軽度の知的な遅れや高機能自閉症・アスペルガー症候群と明確に鑑別して診断することは困難なようです。
先生からの指示をしょっちゅう聞き漏らしたり、必要なものを頻繁になくしてしまうなどの「不注意」、先生の話を聞くときに座っていられず常にウロウロしたり、座っていても絶えず手足を動かすなどの「多動性」、そして思いついたらすぐに動いてしまい待つことができない、おしゃべりで人の話をさえぎって会話をするなどの「衝動性」が代表的な症状です。私たちの回りの人たちを観察すると、「子どもの頃はそのような特徴があったに違いない」と想像できる人は不思議と何人かいるものです。また、大人になってからの社会適応に問題がある例として、「方付けられない女たち」が一時期話題になりました。
私たち就労支援の現場では、学校を卒業した後、通常の方法で就業がうまくいかず、人生の早い段階でADHDと診断された方の相談を時々受けます。しかし、軽度の知的障害あるいは知的なボーダー領域ゆえに職場で期待されている通常の労働力を発揮できなかったり、社会性の問題を抱える、いわゆる広汎性発達障害(高機能自閉症・アスペルガー症候群等)ゆえに職場適応が困難である場合が意外と多いようです。すでに成人になった人の新たな診断は、専門の精神科医でも簡単なことではありませんし、本人もその診断を受け入れるまでにかなりの時間を要します。
ジョブコーチは、療育手帳等の取得可能性があると判断した場合、障害者雇用の仕組や手帳取得によるメリットを本人・家族と何回か話し合うことになります。ただし、成人までADHD以外の診断名を聞いていない人と、障害そのものの話をすることは高い専門性が求められます。診断はできないまでも、問診で生育暦を聞き出す技術と乳幼児期の発達に関する知識が豊富な近隣の専門家と相談しながら、将来の方向性を考えることが大切だと思われます。さらに、他の障害を重複しないADHDの方の就労支援については、福祉サービスとして本当に必要性があるのかどうかも含めて、これから私たちが考えていかなければならない問題です。

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大学を卒業後、民間の発達障害専門の診療所で働く。当時は、心理職として乳幼児から学齢時を中心とした発達障害児の療育相談を行っていた。13年後、労働組合(電機連合の神奈川)が社会福祉法人を設立する段階で合流。障害者の一般就労を目指す施設の運営に携わる。さらに15年が経過し、50歳を過ぎてから、現職に。知的障害・発達障害のある人の生活上の課題と支援のあり方について、調査研究を8年間行ってきた。還暦を目前に、4度目の新入社員を2018年4月からはじめました。知的障害・発達障害を中心に、ゆりかごから墓場まで、安心した生活ができる環境づくりに向け、微力ですが、まだまだがんばります。

【略歴】
昭和57年 埼玉大学教育学部卒
昭和57年 (財)神奈川県児童医療福祉財団小児療育相談センター勤務
平成7年  社会福祉法人電機神奈川福祉センター勤務
平成22年 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 研究部・研究課 勤務
平成30年 社会福祉法人横浜やまびこの里 相談支援事業部 勤務