ここ数年、「自閉症が増えている」といった話をよく聞く。ここでは、自閉症の有病率の変遷をまとめることで、ジョブコーチが自分の仕事をみつめる機会を提供する。
私たちの国では、自閉症の原因は発達障害であり、母親の養育態度が原因ではないと、教育や福祉の現場で理解されるようになったのは1980年代以降である。その当時、自閉症は、1万人のうち5人?20人いると言われていた。当時の全米自閉症協会発行のガイドブックに書かれていた数字で、これが全世界で広く用いられていた。また、自閉症と診断されている人のうち、6割は知的に中等度以上の遅れを持ち(IQ50未満)、2割程度は知的にボーダーライン以上(IQ70以上)であると考えられていた。当時の自閉症の概念は、最近の専門書では、古典的自閉症あるいはカナータイプ自閉症と位置づけられている(このタイプのみを自閉症とする専門家はまだ多い)。1940年代に米国の著名な精神科医であるカナー氏の診断の概念を発展・改定されたものである。
その頃、英国ではドイツ人のアスペルガー氏が1940年代に発表した論文を再評価し(ウィング氏など)、さらに後に、英国自閉症協会が急激な事業展開と組織の拡大を行い世界的な発言力を増した(?)ため、アスペルガー障害を含めた自閉症群(自閉症スペクトラム)の概念が私たちの国に浸透し始めた。文献上の問題だけでなく、私たちの国の臨床現場、特に療育機関等で、古典的自閉症から少々外れる子どもたちのケアが当時課題になっていた。英国自閉症協会では、その頃1万人のうち60人の有病率があるとしていた。10年前の全米の有病率の3倍?12倍に跳ね上がっている。また、21世紀には、1万人のうち少なくとも90人としている。まるめて1%の有病率と記す資料も少なくない。また、その内訳として、知的な遅れを合併する人は自閉症と診断される人の3割だと言われている(つまり7割は高機能自閉症・アスペルガー症候群)。
自閉症の有病率の数字が増えている原因としては、1)上記のように自閉症の概念が広がった、2)診断技術の向上ならびに専門家養成の成果、3)本当に増えた(原因不明:食品添加物や環境汚染、都市生活の変化などどれも根拠なし)の3つが考えられている。
さて、以上の有病率1%を軽く超える数字を最近良く目にする。横浜市の地域療育センターの事業報告の数字である。横浜市内には6箇所の地域療育センターと1箇所の総合リハビリテーションセンターがあり、各センターの数字に若干の違いがある(職員の話では医師によっても若干異なるらしい)ものの、乳幼児の人口の6%程度が療育センターで何らかの診断名を受けている。さらに、驚くべきは、その診断名の8割近くが、広汎性発達障害あるいは自閉症関係の診断名がついていることである。つまり、自閉症の有病率4%ということになる。以前、文部科学省がラフな調査で全児童・生徒の6%程度に発達上の障害があると推測していたことを考えると、決して不思議な数字ではないが...ジョブコーチにとって、この4%の人すべてが支援の対象になるわけではないが、注目すべき数字である。